「人生のなかで何が起こるかわからない時期というのは、後から振り返と何よりもかけがえのないものであることが多いのです」 ―― アン・パチェット(作家)
現実がどのように展開するかは、自分ではコントロールできない。
私たちは、その事実を知っているはずなのに、いつからか、人生の「正解」を探すようになってしまいます。
この大学に入れば、安泰。 この会社に入れば、将来は有望。 この年齢で結婚すれば、幸せになれる。
間違えないこと、思ったとおりにいくことが、良い人生なのだと、信じ込むように。 恋愛や結婚においても、それは同じです。
「こういう人と出会い、こういうデートを重ね、こういうプロポーズをされて、こういう家庭を築く」 そんな、予測可能な、安定した未来。 それを手に入れることが、ゴールなのだと。
でも、本当にそうでしょうか。
予測できるということは、安心できるということ。 それは、間違いありません。 傷つくリスクも、道に迷う不安も、そこにはないのですから。
でも、その安心感と引き換えに、私たちは、何を失っているのでしょう。
予期せぬ出来事が、心を揺さぶることもない。 相手の知らない一面に、ハッとさせられることもない。 思いがけない喧嘩の後に、お互いの本音を知って、前よりもっと深く繋がることもない。
すべてが計画通りの、美しいだけの関係。 それは、一見すると理想的ですが、もしかしたら、少しだけ、退屈なのかもしれません。
人生の面白さは、いつも、予定不調和な瞬間に隠されています。
完璧だと思っていた相手の、どうしようもない欠点を見つけて、なぜか前よりもっと愛おしくなる。
計画していた旅行が台無しになって、代わりに立ち寄った名もない食堂の味が、一生の思い出になる。
「この人とは、絶対に合わない」と思っていた相手と、ひょんなことから、無二の親友になる。
私たちの心を本当に豊かにするのは、計画通りに達成された目標ではなく、思い通りにいかなかった道のりの途中で見つけた、小さな、キラキラした何かです。
予測可能な人生とは、目的地までまっすぐに伸びた、舗装された道路のようなものかもしれません。 安全で、効率的で、確実にたどり着ける。 でも、その道からは、いつも同じ景色しか見えません。
一方で、予測不可能な人生とは、森の中へと続く、舗装されていない小径のようなもの。 どこに続いているかは、わからない。 時にはぬかるみに足を取られ、時には道に迷うかもしれない。 でも、その先には、地図には載っていない、美しい花が咲いているかもしれない。思いがけない泉が、湧き出ているかもしれない。
どちらの道を歩みたいか。 そこに、正解はありません。
ただ、もしあなたが、今の人生に、どこか物足りなさを感じているのなら。 一度、その完璧な地図を、そっと閉じてみませんか。
予測できない未来を、恐れるのではなく、楽しんでみる。 思い通りにいかないことこそが、人生の醍醐味なのだと、笑ってみる。
その先に待っているのが、たとえハッピーエンドではなかったとしても、 その物語はきっと、誰の真似でもない、あなただけの、かけがえのないものになっているはずですから。